私は日本を代表する伝統のまち、京都に生まれました。
以来、京都で育ち、事業を営んでおりますが、
生まれに絡んで「ふたつの幸運」に恵まれたと思っています。
ひとつ目の幸運は、京都に生まれたことそのもの。
京都の中でも大変貴重で荘厳な文化財が豊富な地域で育ち、
幼少期には友達と連れ立って、近所の世界遺産をたくさんの絵にしていました。
そのような環境の中で自然と歴史や文化、伝統美に触れることができ、
「大切な文化財を記録する」という事業に関われたのだと、今では理解できます。
もうひとつの幸運は、祖父の事業です。
祖父信三はキモノの絞り染め悉皆業(※)を一代で創業し、事業として育てました。
生まれた時から祖父の仕事を間近で見ることにより、
ここでも日本の伝統と美を肌で感じ、感性を育むことができたと信じています。
※お客様や問屋からの注文を受けて意匠のアイデアを出したり様々な職人に指示を出しながら仕事を調整し、
一枚のキモノを仕上げていたプロデューサーを「悉皆(しっかい)屋」と呼んでいた。
成人したのち、いまから30年前、敬愛する祖父の事業を受け継ぎました。と同時に
染色の世界にデジタル技術を取り入れ、デジタル上での2D画像をインクジェットによる
繊維染色という分野でアウトプットさせる事業に取組みました。
そして日々進化するデジタル技術と二つの幸運により育まれた思いから、
「日本の大切な文化財や価値ある伝統工芸の世界をデジタル技術で未来に残す」という
ミッションを掲げ、3Dデジタルデータのインプットに特化した株式会社DiOを創業し、
今に至ります。
そのミッションは、歴史・伝統・文化としての付加価値の高い財産領域から、現代の社会
の柱でもある経済活動にとっても重要な建築物(プラント施設、ビルディング、高層マン
ションなど)へと対象を広げつつあります。
私個人としての幸運とそこから学んだ記憶を忘れることなく、ミッションと思いを同じく
する仲間と、これからも現代社会に貢献できる会社が事業として成長する先には、
多くの人の「新たな幸運」が待っているのだと思っています。
代表取締役 一筆 芳巳